RESEARCH 研究について

最先端の研究を世界に発信したい!

腎臓研究室は、2018年8月に旧基礎一号館から新腎臓内科医局横に移転しました。素晴らしい環境のもと、今後も最新の腎臓病研究の成果を世界に発信し続けます。

【基礎研究の3本の矢】

1 糖尿病性腎臓病(DKD)進展阻止に向けた研究

DKD進展阻止に向けた研究をこれまで行ってきた。終末糖化産物AGEsとその受容体であるRAGEをターゲットとして、核酸であるAGEs-アプタマー、RAGE-アプタマーを共同研究で開発し、DKDモデル、高血圧モデルに投与することにより良好な結果を得ている(Kaida Y et al. DIABETES 62:3241-3250, 2013)(Taguchi K, et al. Sci Rep. 8:2686, 2018)。

さらにSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬のDKDへの有用性が報告されており、SGLT2阻害薬の効果、有効性のメカニズムを明らかにすべく、糖尿病肥満モデルであるSDT-fatty ratを使用し研究を進めている。新薬として出てくるであろうNrf2活性化薬のGFR改善メカニズムについても探求していきたい。

研究の様子の写真

2 透析患者におけるカルニチン代謝異常とミトコンドリアへの影響

カルニチンはアミノ酸様物質であり、脂肪酸からエネルギー(ATP)を産生するために必須の分子である。我々は、カルニチン欠乏が透析患者の体内AGEs蓄積に関与しており、L-カルニチンを投与すると蓄積が軽減することを報告した(Fukami K, et al. REJUV RES 16:460-466,2013)。

さらに男性性腺機能低下症候群や抑うつ状態にもカルニチン欠乏が関与しており(Fukami K, et al. AGING MALE 17:238-242,2014)、補充療法の有用性が示唆される(Tashiro K, et al. Lett Drug Des Discov.14,6:737-742,2017)。我々は、現在腹膜透析患者へのカルニチン投与の有用性や、カルニチン欠乏JVSマウスを使用し、様々な腎疾患モデルにおけるカルニチン欠乏の臓器障害への影響と、カルニチン補充療法の効果を検証している。

ミトコンドリアの写真

3 iPS細胞を用いた遺伝希少腎疾患への治療

京都iPS研究所と共同して、特にファブリー病などの遺伝子異常を呈する患者白血球からiPS細胞を樹立し、内皮細胞や心筋など様々な細胞に分化させ、臓器障害進展の解明を目指して研究を継続している。

今後は薬剤の効果判定に使用できるパネル作製や、傷害した臓器の細胞における異常な遺伝子を正常化させ体内に戻す遺伝子治療を試みる予定である。

【臨床研究 現在行っていること】

1 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の遺伝子解析と脳動脈瘤との関連について

ADPKDは遺伝性腎疾患の中でも最多であり、特に脳動脈瘤の合併が知られているが、脳動脈瘤合併に遺伝子が関連しているか否かは定かではない。現在、当院法医学講座と共同研究として遺伝子の解析を進めており、脳動脈瘤と関連する遺伝子の探索を行っている。

ADPKD

2 血液透析患者におけるL-カルニチン投与と運動耐容能改善

血液透析患者のサルコペニア、フレイルはQOLを低下させ、その予防のためこれまで腎臓リハビリテーションの重要性が報告されてきた。

我々は、血液透析患者に欠乏しているL-カルニチンの補充療法を行うことで運動耐容能を改善させる可能性に着目し、エルゴメーターを使用した運動療法vs L-カルニチン補充療法で運動活動性の改善に関しどちらが有用かを検討している。

3 小児への腎臓病教育

完成したCKDは改善が困難な場合が多いため、CKD患者の増加を阻止するには、小児からリスクを回避する教育を行っていく必要がある。
我々は、小学校における児童への腎臓病教育を校区ごとに開始した。今後も様々な試みでCKDへの進展を予防していく。
さらに我々は、妊娠中に過食を行うと、後の仔にアルブミン尿が出現することを見出した(Yamada-Obara N, et al. Clin Exp Nephrol 20:853-861, 2016)。 今後は母体環境の大切さについても積極的に啓発していく予定である。

小児への腎臓病教育のイメージ写真

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